学校法人仙台育英学園宮城野校舎復興事業
新栄光、新南冥、新北辰改築工事に関わる
地鎮祭挨拶

 

 2011年3月11日午後2時46分に発生したマグニチュード9.0の巨大地震と大津波は私たちの故郷、みやぎに壊滅的な被害を与え、数多くの尊い人命と大切なものを奪いました。
 東日本大震災と呼ばれるようになって10ヵ月経った今日でも、地域によっては行方不明者の捜索が続き、復旧作業が未だ捗らず不自由な生活を強いられ、将来の生活見通しが立てられない多くの人々がいる厳しい現実と私たちは向き合っています。
 このような状況のなかで、本日ご参集の皆様には大震災直後から深刻な被害を受けた仙台育英学園宮城野校舎の仮復旧工事、仮設校舎の建築・移築工事、解体工事等に迅速に携わっていただき、お陰様で本日の宮城野校舎改築に関わる地鎮祭まで漕ぎ着けることができました。
 大震災後の度重なる余震と福島原発事故により今後の見通しが立てにくく、暗中模索の日々を過ごしていた3月28日、文部科学省私学行政課長 勝野頼彦様と八木雄一郎係長が防災服にリュックを背負って来校し、「100年をこえる歴史の学園をこの大震災で潰すわけにはいきません。国は応援しますから落胆せず前を向いて頑張ってください。」と学園関係者に静かに、しかし力強く語られました。あの時「復旧ではなく、復興を目指す」と覚悟を決めました。 数々の復興に関する情報を受身で待っていては間に合わないとの焦燥感から5月6日、文部科学省私学助成課で真野善雄専門官に直接ご指導、ご助言いただき、「本格的な復興事業とは」をテーマに盛総合設計事務所様を中心に検討作業に入りました。6月7日には宮城県に「東日本大震災復興計画」を提出し、私学文書課ならびに日本私学振興・共済事業団の皆様に心温まるご指導を受けながら本格的な復興業務に全職員と共に一心不乱で取り組んで参りました。
 昭和40年の宮城野校舎大火災以降、建築されてきた校舎の解体・除去作業を鳥羽建設様には誠実におこなっていただいたと感謝しております。特に、現状復旧作業のまとめとして山砂による埋め戻しの際には放射能による汚染がないか、慎重に対応され、安心、安全な教育環境の基礎を作ってもらいました。
 12月20日宮城野校舎仮設校舎で文部科学省ならびに財務省の査定を受け、現在公的補助の決定を待ちわびているところですが、3月11日から今日に至る道のりを振り返る心の余裕ができただけ、今の状況は好転してきていると感じています。
 津波被害の影響がほとんどなかった多賀城校舎の執務室には、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社 鈴木久仁代表取締役社長はじめ役員の皆様から届いた激励色紙がいつも私たちを見守り、励ましてくださっています。地元金融機関の七十七銀行仙台原町支店様には宮城野校舎で通常行われていた法人業務を支えるため、多賀城校舎臨時法人局に日々お越し頂き、日常業務が滞らないようなご配慮を賜って参りました。
 そしてあの辛く、厳しい時期に不平も言わず、雨天の日も現場作業を厭わずすすめていた大林組現場事務所の皆様、太平電気様、エーブイテック様、技工様、サン・リサイクル様、スポーツ環境建設様、東洋緑化様はじめ関係の皆様にはご苦労様という気持ちで頭が下がります。
 そして、解体工事迫るなか、インデニの足利代表はじめ腕っ節の強い作業員の皆様と汗とほこりにまみれ、過ごした5月のゴールデンウィークの引越し作業が忘れられません。本当にお疲れ様でした。
 思い出が沢山詰まった校舎のなかで整理整頓していると、昭和21年1月10日付の「土地建物借用書」が見つかりました。それは学校法人仙台育英学園の前身となる「財団法人東北育英義会」理事長加藤利吉先生と校長事務取扱の平塚勇先生連名の宮城県知事および関係者への請願書でした。この場を借りて紹介させていただきますことをお許しください。

 「本校は先に戦災に遭い、建物および備品一切を焼失し、目下仙台市長町国民学校において僅かに授業を継続ありし候のところ、今般都市劃法(かくほう)に依り校地の使用不可能と相成り、その筋の通牒がありし候に於いて左記のとり土地建物使用いたしたくこの段を文書にて稟請(りんせい)候なり。」

 昭和21年2月から26年1月までの5年間、旧日本帝国陸軍用地跡を借りて、何とか学園復興を期したいと切々と訴える内容です。
 戦後の混乱期と異なり、現在の本学園には創立100周年記念事業として昭和60年から整備されてきた多賀城校舎があります。
 かつて会津若松出身の創立者加藤利吉先生は私に向かって「万が一のために余裕のあるときは土地を購入し、困窮したときはそれを潔く手放すことを忘れてはならない。」と言い残してくれました。
 これまでもこの教えに従って幾多の危機を乗り切ってきました。しかし、この借用書の内容を読み込めば読むほど、先人のご苦労に遠く及ばない自分がいることを痛感し、越えられない大きなものがあります。
 本日の地鎮祭にご遠路、ご多忙にも拘わらずあいおいニッセイ同和損害保険の鈴木社長様、株式会社大林組の大林剛郎会長様はじめ本学園をお支えていただいております皆様には参席いただきましたこと、本学園を代表してお礼申し上げます。
 学園復興が仙台育英学園の生徒、保護者、教職員、同窓生の悲願です。
 来春この宮城野が人材育成の学び舎として復活し、東北復興の担い手として活躍できる若者たちを育てていける教育環境作りに参席の皆様のお力を是非ともお貸して頂きたいと願っております。ありがとうございました。

 

                  平成24年1月23日

                  学校法人 仙台育英学園
                  理事長  加藤雄彦
                  (宮城野仮設校舎にて)